大腸がん転移後の治療法
大腸がんが転移した後の治療は、早期がんのそれに比べて格段に困難で、また生存率も大幅に低下します。
しかし絶望する必要はなく、治療に全力を尽くすのは医師の務めでもあります。
大腸がんがリンパ節に及んでいれば、開腹手術が必要となります。
がんの切除手術の基本として、周囲のリンパ節もできる限り一緒に切除するようにします。
これを「リンパ節郭清(かくせい)」と呼びます。
このことにより、リンパ液の流れに乗って起きる転移を防ごうというわけです。
直腸がんの切除手術に伴い、肛門まで切除されてしまい人工肛門になってしまうのがいやだという患者さんは多いものです。
しかし、現在は「肛門括約筋温存手術」や「自律神経温存手術」が主流になっています。
ただし、肛門括約筋温存手術が妥当と判断されるためには”条件”があり、がんが肛門からある程度離れた所にあること、がんが腸壁に深く浸潤していないこと、そして、悪性度の低い「高分化型がん」であること、が挙げられます。
大腸がん罹患者の20~30%には、肝臓への転移が見られます。
また、大腸がんを切除しても再発する確率は17%で、そのうち7%の人に肝臓転移が認められます。
大腸がんからの転移がいちばん多い臓器は肝臓で、次いで肺や脳に転移することがあります。
大腸がんが転移すれば、「ステージIV期」という最も重篤な段階にあると判断され、実際の生存率もかなり低いものになっています。
ただし、がん治療の技術は日進月歩で、完全に諦めるのは尚早です。
どこにがんが発生していようと、きれいに切除できれば治癒となります。
ただし、肝臓の一部切除は相当の体力がないと術後に回復できないため、高齢者の場合は手術自体を断念せざるを得ないケースもあります。
転移巣のある臓器を切除せずに転移がん治療を行なう方法としては、肝臓の動脈から肝臓にだけ抗がん剤を送り込む「肝動注療法」、病巣のがん細胞を熱で死滅させる「熱凝固療法」のほかに、「全身化学療法」や「放射線療法」などを用います。