大腸がんの転移
大腸がんは、ほうっておくと転移する場合があります。
大腸がんは、早期のうちに治療しないと、リンパ節やひいては肝臓や肺に転移する確率が増します。
大腸がんに限らず、がんはその成長に伴って一部が剥がれ落ち、剥離したがん細胞は、血管やリンパ管の流れに乗って全身を駆け巡ります。
そして、大腸がんの場合は、大腸から離れた肝臓や肺にがん細胞が定着し、そこにもがんを発生させることがあります。
これが転移です。
大腸がんの転移は、腸壁の中にある細い静脈にがん細胞が入り込み、血液に乗って転移します。
これを「血行性転移」と呼びます。
大腸は門脈を介して肝臓とつながっており、実際に大腸がんが肝臓に転移する例はきわめて多く、結果的には肝臓がんによる肝不全が死因となります。
大腸がんは、早期のうちは自覚症状がありません。
自覚症状を訴える患者のうち20%くらいの人には、すでに大腸がんの他臓器転移が見られます。
大腸がんは比較的転移の確率が高く、一度転移してしまうと、治療は格段に難しくなります。
また、早期の大腸がんでも、そのうちの10%にはリンパ節への転移が見られます。
こうなりますと、リンパ節郭清と腸管切除を行なう必要が出てきます。
さて、リンパ節という器官は、対外から入ってきた異物を駆除する免疫機能を持っています。
しかしながら、がん細胞はもともと自分の細胞であるため、がん細胞の侵入に対する免疫機能は働かず、手もなくがんが転移してしまいます。
そして次には、リンパ節のがん細胞が、血流に乗って全身へと転移していくのです。
大腸がんが腹膜に転移すると、「腹膜播腫」が発症します。
これは、ちょうど種をばらまいたように、多数の腫瘍が腹膜に生じ、治療はきわめて困難です。
腹膜に発生する転移がんはきわめて小さいので、進行しないと発見しにくく、発見される頃には手遅れともなりかねません。
ただし、大腸がんから腹膜播腫に進行する例は少なく、胃がんに伴って起きるそれよりも、発症頻度はかなり低いものです。