ポリープと大腸がん
ポリープとは、「腺腫」とも呼ばれる突起状ないし凸状に隆起した腫瘍のことです。
「ポリープは必ず大腸がんに進行する」というのはまったくの誤りで、ポリープのほとんどは良性で、つまり大腸がんに変化するポリープはむしろまれです。
本当に恐いのはポリープすなわち隆起した腫瘍ではなく、陥凹型大腸がんであることは別項に述べましたが、ポリープはけっして大腸がんにならないということでもありません。
さて、ポリープというのは、大腸の内側に出来る”いぼ”のようなものです。
腸の粘膜に何らかの原因で傷が出来た場合、それを修復しようとして、まずは傷口に新しい傷口を作ります。
これは皮膚の場合は”かさぶた”と呼びますが、つまり正常な現象なのです。
つまり、ポリープは細胞分裂の過程で出来るもので、皮膚に出来るイボもそうですが、胃や声帯にもポリープは出来ます。
それらがすべてがん化することはないわけですから、大腸のポリープだけががん化しやすいということもまたないわけです。
ところで、大腸ポリープが出現しやすい場所は、横行結腸とS状結腸です。
ところが、大腸がんは直腸に出現しやすいのです。
大腸ポリープが大腸がんになるならば、大腸がんは直腸よりもむしろ横行結腸とS状結腸に多発しなければつじつまが合いませんので、「ポリープ→大腸がん」という考えは成立しないことがわかります。
そもそも、腫瘍性であろうと、ポリープは細胞の新陳代謝によってどんどん脱落して排泄されてしまいます。
そしてまた新しいポリープが出来たりするのですが、この新陳代謝の過程で悪性化するポリープはほとんどありません。
もちろん、大腸ポリープが絶対に悪性化しないとは言えませんが、ポリープにとらわれすぎることで、陥凹型や平坦型の大腸がんを見落としてしまうリスクをこそ恐れるべきだと思います。
ただ、「腺腫内がん」と言って、ポリープの内部にがんが出来る場合があります。
また、医療経験の見地からすると、ポリープの多い人に陥凹型や平坦型の大腸がんが多いということもあり、「ポリープを見て安心する」というわけではないということは強調しておきたいところです。
なお、大腸ポリープは2センチを超えるとがん化しやすい傾向にあるようです。