陥凹型大腸がんとは
陥凹型大腸がんとは、ふつうがんの病変部は凸型すなわち盛り上がった姿をしているのに対し、それとは逆に凹状にへこんだがんを言います。
「陥凹(かんおう)」とは、通常凸状のものが逆に凹んだ状態を指し、「視神経乳頭部陥凹」などという言い方があります。
陥凹型大腸がんは、発見するのが容易ではないのです。
まず、内視鏡にはかつては拡大鏡の機能がありませんでした。
そうなると、凹んだ病変部を発見するのは困難でした。
しかし90年代に入って、小型の拡大内視鏡が登場し、大腸の奥までを観察できるようになりました。
内視鏡の拡大機能と小型化により、陥凹がんを発見することがより容易になりました。
しかも、陥凹型大腸がんこそが、実は最も恐ろしい大腸がんのタイプなのです。
発見しにくいから、切除ににくいからと言うよりも、そもそも”大腸がんに関する常識のウソ”がネックになっていました。
大腸がんは、しばしば大腸ポリープと混同されます。
大腸ポリープとは、「腺腫」と呼ばれる突起した病変部のことですが、この線種が、いずれがんとなって進行がんに移行していくというのが、医療の世界でも常識だったのです。
が、それが誤りであることは、比較的最近はっきりしてきたことです。
大腸ポリープの多くは良性、つまりがんにはならないのです。
確かに、大腸ポリープ(腺腫)の中には、悪性化して粘膜下層に潜り込み、進行がんに発展するというケースはありますが、この「ポリープ→悪性化(がん化)→進行がん」というプロセスは、実はあまり頻発するケースではないのです。
それよりも、「陥凹がんが進行がんに移行する」ケースが圧倒的に多いことが、最近わかってきています。
かつては、内視鏡技術の進歩の遅れにより、あからさまに盛り上がったポリープの発見が精一杯で、そもそも陥凹がんなどその存在すら知られていませんでした。
ところが1977年、千葉県がんセンター医師が、「ポリープ化せず、通常の粘膜が突如がん化するタイプのがん」を発見したのが、最初の「陥凹型大腸がん」の発見となりました。
今までに発見された最小の陥凹型大腸がんは、直径わずか4ミリ程度だったとされています。
これを発見した医師は、「陥凹型大腸がんを見つけることを目標にしていた」と語ったそうで、どんなに内視鏡技術が発達しても、大腸がん患者を救うのは、医師の技術もさることながら、その情熱にあるということを物語るお話ですね。