大腸がんの放射線療法
大腸がんの放射線療法は、がんの切除に伴って、補助的療法として用いられる点では、化学療法と同じです。
化学療法が投薬によって行なわれるのとは異なり、大腸がんの放射線療法は、がんの部位めがけて放射線を照射するというものです。
がんが放射線に弱いということは知られており、放射線は、がん細胞のDNAを破壊、分断する働きを持っています。
ただし、正常細胞にも悪影響を与えることから、大腸がんの放射線治療はその点に注意が必要です。
がんの放射線治療を受けている人は、24万人にも上るとされますが、大腸がんや胃がんなどの消化器がんに対する放射線療法の効力には、やや心もとない結果が出ています。
大腸がんの放射線療法には、大きく分けて次の2つがあります。
◆ 補助放射線療法
直腸がんにおいて、手術前に大きながんを小さくすること、手術後に取り残したかもしれないがんを死滅させること、また肛門括約筋温存療法を実現するために肛門周辺のがんを取り除くことが目的です。
切除が可能な大腸がんには、高エネルギーのX線を数週間にわたり体外から照射して、がん細胞の増殖を抑えておきます。
また、手術前から抗がん剤を投与し、放射線療法と併用する「術前化学放射線療法」というものもあります。
◆ 緩和的放射線療法
切除不能な転移がんや、再発大腸がんに対して用いられます。
放射線療法は、末期がんの痛みや出血を抑えるのにも用いられます。
なお、ステージIII期以降の大腸がんは、放射線療法だけでは治せません。
また、「早期がんを放射線療法で」というように、放射線療法をあまりに気軽に考え、あるいは内視鏡手術をあまりに敬遠するような考えからと思われる要望がときおりありますが、早期がんには内視鏡手術、進行がんには腹腔鏡手術か開腹手術、が大腸がん治療の基本であることを、もう一度強調しておきたいと思います。
放射線療法は、正常細胞を避けて照射できないため、正常細胞が受けるダメージは、小さなものでないことも知っておくべきだと思います。