食物繊維と大腸がん

「食物繊維の摂取量と大腸がんのリスクとの間に相関関係はない」という統計があります。

このことを聞いて、ショックを受ける人も多いのではないでしょうか。
食物繊維(ダイエタリーファイバー)と言えば、「健康を増進してくれるもの」と考え、高いお金まで出して食物繊維の豊富な栄養食品などを買い込んでいる人も多いからです。

さて、食物繊維は、では必要のないものなのでしょうか。
ここで早合点は禁物です。
じつは、冒頭の記述は、「多目的コホート研究」にかかるレポートにあるものなのですが、同時にこのような記述が補足されています。

「食物繊維の摂取がきわめて少ない場合、大腸がんリスクは高まる」というものです。
女性に限って言えば、「最小摂取グループ」の大腸がんリスクは、「最大摂取グループ」に比べて、じつに23倍だったと言うのです。

要するに、「食物繊維は大腸がんリスク軽減のために必要である」が結論であり、ただ、摂れば摂るほど効果があるというわけではない、ということが分かります。

欧米におけるさまざまの統計レポートでも、「食物繊維に大腸がんの予防効果は認められない」としている一方で、「一日10グラム未満しか食物繊維を摂取しない人は大腸がんにかかりやすい」という報告があります。

結論すれば、食物繊維はこんにちの食生活では摂り足りない傾向にあるため、努めて適量の食物繊維を摂取することで、大腸がんのリスクを軽減できる、ということになりそうです。

食物繊維は、消化されずに大腸まで届いて、腸内細菌の”えさ”になるとされており、さらに腸壁を刺激して蠕動運動を促進する働きを持っています。

また、脂肪を消化するためには胆汁酸が分泌されますが、これが大腸内で二次胆汁酸に変化して、発がん物質の働きをすると言われていますが、食物繊維は、この二次胆汁酸を吸収してくれるのです。

さらに、水溶性の食物繊維は、上記の働きに加え、コレステロールの吸収をコントロールしたり、血糖値の急激な上昇を抑えたりすると言われています。
加えて粘膜を強化する働きや、抗酸化力があるため免疫機能を高めてくれる作用があるともされています。


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